99.(1/15)東雲の許し

99.(1/15)東雲の許し

Dawn Pink(ドーンピンク)はご存知だろうか。
Dawnは、夜明け・あけぼの。日本名を東雲色という。
新明解国語辞典では、東雲は「明け方」の雅語的表現。

ネイチャープロの色々な色(現:色の名前 )によると、
“明け方の東の空の色を表す曙色は浅い黄みの赤。”
“東雲色ともいいます。”ピンクにオレンジがかった色だ。
四国で過ごした43日間、この日だけ、東雲の空を見た。

歩き遍路をされた方はご存知だと思うが、
ここ宍喰から次の寺、24番最御崎寺までの約40Kmは、
海沿いを走る国道55号をひたすら南を目指して歩くことに。
だから、あたしが東雲に染まった空を見たとき、同時に、
海が空を反射して、全てが優しいピンクに包み込まれていた。

刻一刻と表情を変える空は、その瞬間瞬間が一期一会。
空が白み始めたときから、いつまでも足りぬ美しさ、
まだ足りないと思っていたら次の瞬間にはオーバーしてしまう、
最良には満たされぬ美しさを自分自身に焼き付けていた。

海岸には漁火?
夜が過ぎたのだから、単なる焚き火か。
恰好からすると若い人達が幾つもグループを作っては、
それぞれの焚き火を囲んでいた。おそらくサーファーの人たち。
(真冬なのに日中、サーフィンを楽しむ人たちを見かけたから)
酔いの残るあたしの目にその炎がピンクとなり、幻想的だった。

あたしはこのとき初めて、自分を許していいんだと思った。
昨夜、自転車遍路さんと健脚さんに話した打ち明け話、
覚えてるのは「うちの父親は暴力が酷くて…」まで。
人前にも関わらず、唐突に泣きだしたことしか覚えてない。
酔いが冷めるにつれて気恥ずかしさが込み上げる。

どうして泣いてしまったんだろう?
女の涙は都合よく他人と壁を設ける手段にしか思えない。
ずるくて卑怯。泣く女を邪険になんてできないじゃない。
だから泣きたい時はいつも自分に言い聞かせてた。
“帰って一人になるまで泣くのは我慢。あたしは強い。”
そう思っていたのに、どうして人前で泣いてしまったんだろう。

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