1/5.遍路0日目

000.旅立ちに未来を感じるか?

00.旅立ちに未来を感じるか?

旅立ちに、不安はおおいにあった。
宿が見つからなかったら、
事故や事件に巻き込まれたら、
用意したお金で足りなかったら、
なによりも、四国一周を歩ききれるかどうか。

これを読んでいる方の中にも、
四国遍路をする決心をつきかねている方は結構多いと思う。
遍路をする気はあるのだが、最後の決心がどうしてもつかない。
四国へ行くと決めたが、果たしてこれでよいのだろうか。

あたしの受け取るメールは、若年層と年金層に分れるが、
わかりやすいストレートな感情をぶつけてくれるのは若年層だ。
メールから察するに、考え方は大人びた方が多いが、
彼らの生真面目な問いには、子供の持つ真摯な純粋さを感じる。

「信仰心もなく、四国遍路をしてもいいのだろうか。」
「やる気はある。だけど目的もなく、遍路をしてもいいのか。」
「深刻な悩みや理由があるわけでもなく、遍路をしてもいいのか。」
(彼らは例外なく、歩き遍路を希望している)

迷いは、不安に気圧されて弱気になってるせいではない。
自分が遍路することは、果たして、正しいか?正しくないか?
時間とお金の犠牲につりあう価値があるかの計算よりも、
もっと純粋に、自分自身をつかみあぐねてる苦悩が濃い。
端的に体験者のあたしが断言すると、その価値はある。

そう、表面的な問い自体は難しくない。
彼らは後押しを求めている。だから背を押せばいい。
しかし問題は、奥にひかえる難題だ。
彼らは答えを他人にではなく、自分自身の内側に求めている。
あたしは後押しできても、彼らの内側を納得されるのは難しい。

メールでの迷いは質問ではなく、独白として、にじみ出る。
決意しているのに、煮え切らない自分を持て余す姿も見え隠れ。
自分を信じたい自分と、信じられずにいる自分がせめぎあっている。
時間は容赦なく経過し、行間の神経質な苛立ちが悲鳴のよう。
旅立ち前のあたしと重なり、複雑な心境になる。

旅立ち前、あたしが信じたもの。
それは四国遍路をやり終えた自分に未来を感じたから。
ドキドキやワクワク、なにか良いことを感じたから、やった。
だから、プラスの直感が働くなら絶対すべき。
逆にマイナスの直感が働くなら、しないほうがいい。

きっかけなんて何でもいいと思う。
最終的に意味があるのは、やったか、やらないかだ。
歩き終えて残るのは、やり遂げた達成感。
きっかけが些細であるほど、最後には、
そのチャンスをモノにした自分をすごいと思えるはず。

01.見送ってくれた友人の手紙

四国遍路へ思い立ったのは8月頃。 旅立ちは1月。
四国へ行く目標ができたおかげで無駄遣いが減る。
毎日バイトに明け暮れ、5ヶ月で60万貯める。
15万は装備や荷物代。 5万は移動費。
残り40万が、四国で実際に使用するお金。

絶対に、親をあてにしたくなかった。
弱みは見せたくない。
あたしのすることへ、口出しの余地を与えたくなかった。

相談はインターネットで済まし、親友にすら、計画をひた隠し。
反対されれば、あっさり、くじけそうな自分を予感して、秘める。
すべての算段がつき、四国へ行くしかない状態へ自分を追い込む。
そうして、あたしが親友へ旅立ちを告げたのは、2週間前だった。
いつの間にか、意志が固い決意へと変化していた。

そして1週間前、親とバイト先に押し切る形で旅立ちを告げる。
「年明けたら、旅(四国遍路)に出るから」
あたしが決めたことだから、もう誰にも邪魔させない。
面倒は帰ってから考えればいい。
きっとその頃には、面倒が面倒じゃなくなってる。

出発前日、親友からTEL。
「何時に出発するの?」
せっかくだからと、見送りに来てくれることに。

「お守り渡そうと思って」
そういって、親友から手渡された“足腰健全仏足御守”。
足が痛くならないように気遣ってくれたらしい。

親友とは、この半年前の初夏に3泊4日かけて、
長野から直江津、佐渡行きの連絡線乗り場まで歩いた。
国道をひたすら歩き、標識には200kmの文字。
行き当たりばったりの決行に、荷物はガラクタだらけ。
コンビニで買った懐中電灯とビニールシートが重宝した。

ベンチや芝生で野宿。ウォッカをあおりながら歩く。
トラックの運転手がクラクションをならして通り過ぎてく。
騒々しいのは嫌だったが、人気のない山中の道も怖かった。
このとき 、あたしはつい無理をして、膝を壊してしまう。

歩くたびに激痛が体を走る。
「いたい。いたい。いたい。もうやだー。」
と、真夜中の国道で、不満を絶叫するあたし。
そのことをよーく覚えていてくれたみたい。

「・・・ありがと。」
微妙な沈黙が照れくさくて、早々に別れを告げた私。
電車に乗ってから、親友からの手紙に気付いた。

01.見送ってくれた友人の手紙

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