1/6.徳島編_遍路1日目

02.早朝の道案内

02.早朝の道案内

早朝6時11分。
1番霊山寺近くの板東駅のホームに下りた。
無人駅を通り抜け、立ち止まり、地図に目を落とす。
辺りは薄暗くて案内も見えず、心細い。

たぶん、こっち。歩き始めたそのときだった。
後ろから声をかけられた。
「お遍路さんやろ?」
振り返ると、さっき通り抜けた無人駅の待合に、
座っていたおばあちゃんだった。

75歳の誕生日を迎えたばかりというおばあちゃん、
早朝に霊山寺へお参りするのを日課にしていた。
「始発に乗ってくるお遍路さんを道案内するんよ」
そういって、霊山寺まで連れて行ってくれた。

03.女の足

霊山寺の納経所が開くのは7時。
手前の本堂に手持ちぶさたで立っていると、
奥さん連れの年配お遍路さんに声をかけられた。
「歩きですか?女性の足で歩くなんて大変ですね。」

他意はなかったと思う。
でも私の内心は複雑だった。
女の足とはいえ、男性の足に劣るわけじゃない。
そんなにヤワでも弱くもないのに、女だから大変?

これがきっかけかは分らないが、
あたしの旅が先を急ぐ、
せかせかとした旅になったのは事実だった。
男の足に負けたくない、と。

霊山寺の納経所が開いた。
必要最低限、納経帳と納札だけを購入する。
他のものは必要になった時に買うつもりだった。

04.杖は絶対

へんろ道を間違えながらも5番地蔵寺を打ち終え、
この日の宿泊先である民宿寿食堂に昼に到着。
予定より早いペースだった。

計算では1つの寺に30分費やすはずだった。
しかし私の参拝方法は、
灯明と線香を供え、手を合わせるだけのもの。
冬場だから納経で待つこともほとんどない。
私には15分もあれば十分だった。

民宿に荷物を置かせてもらい、道を確認。
さっさと出かけようとすると、ご主人に杖を渡された。

いったんは断ったものの強く勧められ、
結局杖を借りて出かけることになった。
「杖は絶対にあったほうが良い」らしい。

05.吐き気

遍路道を5番地蔵寺方向へ戻り、
大山寺との分岐位置にある神宅郵便局を探す。
見当たらず、気付けば目の前に八坂神社があった。
いつの間にか郵便局を通り過ぎてしまったらしい。
そこで休憩がてらの昼食にした。

出会う人に何度も道を尋ね、道を確認しながら、
別格1番大山寺に登る遍路道を発見する。
ここで一気に脱力。が、すぐ後悔した。

登りの遍路道は、遍路初日にしては険しい。
登っても登っても、景色は変わるが、道は続く。
茂った草木の乾燥した種子が服にこびりつく。
苦しくて、何度も道の真ん中にへたり込む。
あげくに吐き気までこみ上げてきた。

昼食は途中で買ったサンドイッチと牛乳。
食べてすぐに動き過ぎたのか、胃がむかつく。
立ち止まっては胃を押さえ、
空を見ては息を整えた。

この一件から、
その後は昼食をきちんと取るのではなく、
歩きながら食事をつまむスタイルになった。

06.目のない仁王

青い空に続く白い道、道を縁取る緑の竹林。
その竹林の陰から、うらぶれた仁王門が見えた。
午前中は手入れの行き届いた小奇麗な寺ばっか、
だから、この別格の出現は衝撃的だった。

過去には、極彩色に美しかったはずの仁王。
朽ちて片目が空洞となった今も、前方を見据え、
悪いモノから寺を守り続けている。
気圧されそうな雰囲気がそこにはあった。

同じ人から生み出された仁王。
一方が人に手を加えられ、
人に生かされ続けている綺麗な仁王なら、
こちらは朽ちることを許されず、
なんらかの意志に生かされ続けてる仁王。

予想以上にきつい登りの末、
やっとの思いで辿りついた達成感も手伝ったか。
全身に静かな感動が沸き起こった。

1/6.移動と宿泊

本日の移動

6:55 1番霊山寺
7:22 2番極楽寺
8:25 3番金泉寺
10:05 4番大日寺
10:33 5番地蔵寺
11:50 民宿寿食堂(荷物置く)
14:14 別格1大山寺
16:20 民宿寿食堂

本日の宿泊

名前 民宿寿食堂(088-694-2024)
場所 5番~6番の遍路道沿い
別格1番の登り口のそば
料金 6,825円
洗濯 洗濯機・乾燥機有料
備考 5円とマッチのお接待を頂く

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